書評「最後の社主」

 

 

読んだ。朝日新聞の村山美智子社主の浮世離れぶりした生活と、最晩年の朝日からの邪険な対応が諸行無常感がある。

おそらく著者が書きたいのは後半の著者が現場で体験したであろう「邪険な対応」の方でであろう。「実に鮮やかな手段」で美智子氏の株を、公益財団法人香雪美術館に譲り渡すように仕向けたのだ。美智子氏から長年信頼を受けたお世話係を首にしたり、直前まで上手く行きそうになった養子話を朝日の工作でフイにしたりと、まるで、早く死ぬか意思疎通が出来なくして「死人に口なし」で事を進め、村山家を一日でも早く朝日の影響下から切り離そうとしているかのような印象を受けた。

美智子氏の株の受け皿となった香雪美術館の理事はほぼほぼ朝日関係者によってしめられており、資本と経営(あるいは編集)が分離した状態から一致した状態に退化しているとすら言える。*1

このほかにも美智子氏の離婚歴を隠していないにもからわらず、朝日が経歴を必死で隠そう*2としたり、本署にも出ていた恭平氏がアゴラで告発していたが、A元社長(おそらく秋山耿太郎氏)が、まだ心肺停止にもなっていないのに白々しく「社主、残念です」と発言したり、東北新社の問題を「成人したとしても息子の不祥事は親が責任を取るのが当たり前だ」と言わんばかりの論調なのに、大麻取締法違反で息子が逮捕されたことへの責任を何一つ取らないで、社長どころか、日本新聞協会会長や日本対がん協会の理事長*3を歴任するなど、「随分やっている事と、言っていることが違うんですね」と言いたくなる。

結果、この「創業家追い出し作戦」は社主制度の廃止という形で結実し、朝日の完全勝利という形で終わったと言って良い。しかし、その「悲願」が達成された年に襲ったコロナ禍で不動産事業も立ちゆかなくなり創業以来最大の赤字となるのはなんとも皮肉であるが、創業家や美智子氏を邪険に扱った天罰なように見えてならない。朝日ウォッチャーであれば必読の書。

*1:マスコミの役割は権力の監視というが経営と資本が一致した状態で朝日という権力は誰が監視するのだろうか?

*2:知られてほしくない情報を報道するのがジャーナリズムじゃないんですか?

*3:朝日新聞社の創立80周年記念事業として始まったのでおそらく朝日関係者が理事長として天下りする