国立競技場の直天井からみる公共建築考
国立競技場はなんで直天井なんだみたいな話になったのですが、
1.大空間の吊り天井は地震に弱いことが東日本大震災で崩落事故が相次いだことから避難所としての機能が期待されるスタジアムには適なさい*1
2.スタジアム設計に置いて現在は「客は試合を見に来ないから予算を観戦環境を良くするために割り振るべき」というコンセンサスがあるので、コンコースの設計は露骨にケチる傾向がある。例えばコンコースはマツダスタジアムも露骨にショボいですし。
3.世論が90年代ごろから(バブル崩壊とは微妙に異なる)ハコモノへの予算配分に批判的になった。
一番根深い問題は3.でしょう。建築物の予算の妥当性なんて本来は高度な専門性を要求されるべき物なのに、建築の素人がくちばしを挟むようになってきていて、今は、とにかく1%でも高稼働率じゃないと文化施設の予算執行は認められなくなれています。
サッカー専用スタジアムというのも、パナソニックスタジアムは任意団体が建設して吹田市に寄贈し、その代わりに指定管理者としてガンバ大阪が超長期で契約したり*2、専用スタジアム化が話題になった等々力の再整備も東急によるPFI事業といったように、行政主導よりも、民間主導の事業が一般的であります。
そもそもスポーツの興業というのは極めて民間的な話で、行政とは馴染まない分野でありますし柔軟性がとにかく欠けているとなれば今後はスタジアムに限らず公共建築はPFI事業として民間に建築させて、行政はその建物を利用するというやり方はますます増えるでしょうし、スポーツチームやシェアエコノミーではありませんが、「所有する時代」から「支援・利用する時代」になっているように思えます。
また、デザインのブームもスカイツリーのような露骨に目立たざるを得ない建築は例外としても隠すデザインのほうが好まれるようになってきています。ザハとSANNAで争った最初の国立競技場のコンペのSANNA案も「隠す」デザインなので、そう言う意味では国立競技場は二重の意味で世評に反逆する建築物だったのかなとは思います。