サウジは自然エネルギーの覇者を狙う?
世界の産油国が供給過剰による原油価格下落について気をもむ中、サウジアラビアは需要後退の方をより懸念していることを示す兆候が増えている。
サウジ石油鉱物資源省のアドバイザーを1988年から2013年まで務めたモハマド・サバン氏は、世界最大の原油輸出国であるサウジは価格下落が消費を刺激すると見込んで減産を実施しないことを選択したと指摘。米銀バンク・オブ・アメリカ(BOA)の世界商品調査責任者、フランシスコ・ブランチ氏によると、サウジは燃料効率と再生可能エネルギー向けの投資動向を注視している。
サバン氏はインタビューで「油田に原油が埋蔵されている限り需要が継続すると考えるべきではない。われわれは自分たちで準備をする必要がある」と語る。
米国のシェール革命は、世界の原油供給減少の見方が時期尚早だったことを示した。クリーンエネルギーのコストが低下し各国が気候変動の抑制に重点を置く中、サウジは世界の原油需要がピークに近づいていることの方を、より懸念している。(ブルームバーグ Isaac Arnsdorf)
些か旧聞ですが 、以前も石油は競争力を失ったと言うことを書いたのですが、サウジがこのような認識を抱いているとは驚きました。
昨今の原油安は単なるシェール潰し、すなわち石油市場におけるサウジアラビアのシェア拡大ではなく、仮に石油そのものの一次エネルギーに占めるシェア拡大に動いてるとしたらこの原油安は長期化をすることは間違い無いでしょう。
しかし、ここで注意しておかなければならないのは、増え続ける人口と資源消費に対応するためにサウジ自身は自然エネルギーに多いに関心を抱いていると言うことです。
すると、ここである一つの仮説というか、もし私がサウジの国王であればこうするだろうなという施策が浮かんできます。それは石油価格のダンピングによって自然エネルギー産業を潰して、あとは買収により技術を買い叩くと言うことです。
なにせ中東の産油国は大昔から「石油がなくなった後」のことに強い関心を抱いていますし、大手石油会社もオイルショック以後からは新エネルギーの開発には大変に熱心であることを考えたら、石油で食べている国が、石油の次の産業を新エネルギーで食べていくということは一見したら意外ですが、自然なことではあります。
日本のエネルギー議論は専ら電力需給だけに矮小化して、「原発だ」「いや自然エネルギーだ」と言い争ってる状況ですが、だれもが関心を抱く電力供給すら電力自由化だと行って市場に任せたらどちらも選ばれずにおそらく大石炭時代になるでしょうし、既にその兆候は見えているのです。世界は日本のような矮小な雑事に政治のエネルギーを浪費せずに対極的かつ大きなスケールで動いてるのです。
エネルギーの本質というのは安価でいつでも使えることで、自給自足の実現はその手段となる可能性の一つにしか過ぎません。輸入に頼る日本では安価でエネルギーが買えることと言うのは世界平和と潤沢な供給の実現であります。そこに着目した議論が殆ど無い点で反原発派も原発推進派も落第点なのです。