COCOA問題についての一考

COCOAAndroidで通知されなかった問題。少なくとも問題の根本は厚労省が著しくITへの知識を欠きオープンソースへの理解が不理解であったことに尽きると思われます。

ライブイベントなどではCOCOAのインストールが奨励されるケースも多いのですが、それらは信頼によって成り立っていたはずで、例えバグを修正したとしても私ですらイベント責任者ならCOCOAよりも野口五郎氏が開発したTake Our Live *1を推奨するのかも知れません。

おそらくNTTデータ富士通と言った大手SIerよりも、オープンソースとして開発して、遅巧より拙速が求められ、バグやバックドアの監視するために、多くの目でソースコードをレビューすることにより信頼性を確保する方針はこれほどにもなく正しい方針であったと私は断言します。

しかし、厚労省に引き渡した時点で不具合の問合せは厚労省のメールで送るように促されるなど、オープンソースコミュニティベースではなく厚労省が発注した開発会社が管理する形態となり、COCOAGitHubサイトは実質的に「ソースコード置き場」となっており、オープンソースのメリットを完全にスポイルしてしまった形となってしまっていますが、どうも躓きはリリース直後から合ったように思えます。

消された幻のアプリ

このコロナアプリに類似するアプリとして同時期にふたつのアプリがありました。

  • Covid-19 Radar JAPANの「Covid-19 Radar」
  • Code for Japan(一般社団法人コード・フォー・ジャパン・以下CfJ)の「まもりあいJAPAN」

の二つが開発され、前者がCOCOAの前身となりました。で、問題はなんでCovid-19 Radarを採用したのか全く経緯が明らかにされていないことです。

AGF(Apple/Googleによるコロナ追跡API)は保健当局からリリースされる1国1アプリという制限があったことから、どちらかを採用。逆に言えばどちらかを不採用にしないといけないわけですが、当然落とされた方が面白くないのでそこに明白な説明が必要なのです。

まさかだと思うのですが、開発リーダーの廣瀬一海氏はMSの社員だったのでMSが作ると勘違いされて採用されたのでしょうか?

誰が開発したかはソフトの質を担保しないのは7Payで明らかなのですが。

それはともかくとして、CfJは広報に長けていたことから、コロナ対策=CfJみたいな図式が出来あがり、採用が有力視されていたわけですから、
下馬評をひっくり返したとなれば「何か癒着がある」と邪推されかねません。

というか、リリース直後廣瀬氏が自身のTwitterアカウントで、「この件でコミュニティーはメンタル共に破綻した」と表明するほどの激しいバッシングが起こったわけですが、その背景には、説明無くCfJを落とした事に対し、政府との癒着が邪推されたこともあるように思います。

 厚労省に引き渡された後はクロースといってもソースコードは公表されるわけですから、ちゃんとどこの部分が問題なのかをレビューすべきなのですが、そういう解説はほとんど見られない印象論だったわけで、こういうバッシングから泥を被ってでも厚労省は開発者を守るべきだったのでしょうが、全くしていませんでした。

一説にはCfJの方が優れている(繰り返しになりますが何処が優れているのか双方のソースコードを引用した技術論を見ていません)とされていましたが、この分ではおそらくCfJを採用していたとしても、どこかで重大な問題を踏み抜いていたように思います。

仏作って魂入れずのIT戦略

かつて、国のITシステムは電電公社のデータ通信本部(今のNTTデータ)が提供するデータ通信サービス(デ通サ)というサービスが独占していたことがありました。

これは何かというとNTTがオーダーメイドでサービスを開発して、ユーザーは数年契約でサービス料を払うことで開発費を回収するというもので元祖クラウドのようなサービスです。一定額なのでお役所には使いやすい一見すれば良いことづくめなのですが、

  1. 作ったシステムの著作権NTTデータ持ちでベンダーロックインが起こる
  2. 価格設定が不透明である
  3. NTTデータはキャパシティを切り詰めるインセンティブがないのでオーバースペックなサービスとなり更に割高になりやすい

と言った弊害が指摘されるようになり、役所でもデ通サの新規開発はなくなりました。

しかし、デ通サをやめたからと言ってたちまち官庁のITリテラシーは上がるはずもなく、むしろ百戦錬磨のITベンダーと対等に話し合えるリテラシーが必要なはずなのに、それへの対策はおざなりで、ただデ通サをやめただけという結果になりました。

その結果が低クオリティな役所のITシステムの量産に帰結したのですが、どうもITに関しては「全てお任せは高い」「商品知識がないとカモにされる」という世の中の絶対原則が忘れられているように思います。

はっきりいって、やや極端な話をすればITリテラシーを向上するつもりがないなら「割高な分はお任せのコスト」と割り切ってNTTに丸投げしてデ通サの新規開発でもして貰った方がマシだと個人的には思います。

コンピュータの解らない組織も国もに21世紀はないはずで、ITリテラシーを向上するのか、もう一度NTTデータに頭を下げるのかしないとこの国は持たないと思いますよ。本当に。

*1:これの方が優れているみたいな意見も散見されるけどもともとあったチケットに印刷されたQRコードを読み取って登録するとアーティストからライブ終了後にメッセージが受け取れるというファンサービス用のアプリに通知システムを負荷したもので仕組みとしては都道府県が運営するコロナ通知メールシステムと変わらない