これは酷い「みんなで叶えるディストピア」ですね

 

 紙幣の左右反転疑惑、燃やしているのは韓国から渋沢栄一の肖像を採用することが大して燃えなかったせいなんじゃないかと思うし、ネットで話題と言うけど、その割にマスコミ報道で初めて聞いたのですが、日経に大蔵省OBの人のインタビューを交えて、こういう経緯を紹介している。

 

 

 植村峻氏(引用者注:大蔵省印刷局で紙幣の製造業務に携わり紙幣研究をしている方)は「紙幣肖像の目的は、モデルの持つ内面まで表現して生命力のある肖像を作成しようというもので、決して写真の正確な模倣ではない」と言いきる。実際、1951年に発行した500円札では明治の元勲・岩倉具視の肖像を左右反転して用いた。原型は1989年(明治22年)に外国人彫刻師のキヨソーネが完成させた大型の彫刻作品だ。オリジナルでは顔は右方向を向いており、大礼服を着用して胸に勲章を付けていた。お札では姿勢を左向きに代え、蝶ネクタイの洋服姿にして印刷した。(強調は引用者)

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 このほかにも偽造防止対策として肖像画が世界的にも大きくなる傾向で、現紙幣より1.3倍も拡大しているなど面白い話があるので一読してほしいが、もしこれが津田塾大学が文句を言ってるならディスコミュニケーションの問題ではあるけど、いずれにしてもあくまでも「写真を参考にした絵」であれば左右が逆でも問題が無いはずだけど、あまりにPhotoshopが普及しすぎて「写実的なものは全て写真の加工品」という認識がされているのではないかというのが話の根本じゃないかと。

 

 そもそも、英数字をデカデカと載せるのは紙幣として品格がないとか真ん中じゃないのはおかしいとか、ホログラムを変な帯扱いしたりとどうもケチをつけたい人が多い。この現状はまるで、東京オリンピックのサノケンエンブレムか、国立競技場のザハ案を思い出す。

 

 しかし、思うのはその道何十年のプロの感覚よりも素人のおかしいという因縁の方が力を持つ時代なのだと言うことである。「写真を参考にした絵」であれば問題ないと言ったけど、それすら目トレスなんていって因縁を付けられるご時世である。素人の合議の当たり障りのないデザインやプロダクトがよいデザイン・よいプロダクトという時代なのかも知れない。

 

 実際公共建築だって90年代まではデザインに凝ろうとしたけど、いろいろあって今じゃイオンのショッピングセンターのほうが凝ってるってくらい味気ない建築ばかりになってきている。

 

しかし、素人の感覚の方が力を持つというのは自分の仕事が素人に叩き潰される番がいつか来ると言うことである。

 

紙幣だって、「国民の皆さんの意見を参考にして」パブコメを募集して、佐藤可士和あたりが座長の諮問機関を立ち上げて数案出してご意見を伺いしますとした方が確実に揉めなかっただろうが、そうして出来た物の何処に偽造対策やユニバーサルデザインなどが盛り込めるのか疑問である。

 

当たり障りのないというのは、先鋭さも進歩も何もないと言うことではないだろうか?