報知から出された新国立競技場見直し案は新たな利権の匂い

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2020年東京五輪パラリンピックのメイン会場となる新国立競技場(8万人収容、東京都新宿区)の建設費を抑えるなどした新たな建設計画案が民間会社から文科省などに提出されたことが14日、分かった。政府関係者が明らかにした。計画案では、座席の大部分を仮設席として建設し五輪終了後に座席数を削減するなど合理性を重視した建築方式。現行案での着工予定は10月だが政府内では、この計画を支持する声が広がっており今後、新計画案が採用される可能性が浮上してきた。

 新国立競技場の建設費を抑制するなどした新たな計画案は、民間会社から文科省複数の閣僚経験者、自民党幹部らに提出された。中身は競技場のイラスト、運営費の試算など具体的な内容で政府関係者はスポーツ報知の取材に「現行案からの大幅な変更となるが、問題山積みの現状を打開するには、この計画しかないと思う」と明言。「メイン会場の建設方法を変更する場合、国際オリンピック委員会(IOC)への説明や大きな政治決断が必要になる」とも述べた。

 新国立競技場文科省の外郭団体、日本スポーツ振興センター(JSC)が建設・運営を行う。現行案の新国立競技場は屋根部分の建設に高い技術が必要となり、資材の高騰などを受け、建設費は一時3000億円とされた。識者らから批判を受け、競技場の大きさなどを2割削減。現在は1692億円から2100億円と試算している。また、年間の運営コストについてもJSCは「約3億円の黒字」としているが、複数の政府関係者は「現行案のままでは、五輪後数年で赤字になる」と指摘。東京五輪の前後は“特需”で数億円の黒字になる可能性はあるものの、年間維持費の40億円がネックとなり、20億円以上の赤字が継続する可能性があると試算した。

 こうした状況を改善するために民間から新たな建設計画が提出された。この計画案によると、新国立競技場の収容人員8万人のうち、5万5000人分を仮設席として建設する。また、現行案では行われる屋根の開閉はやめて、客席部分のみを覆う形で設置するなど建設費用を削減する。東京五輪終了後には、この仮設席を撤去して別の競技場に再利用する。現行案の工期は約42か月となっているが、新計画案では約30か月で大幅に短縮される。

 仮設部分を撤去した新国立競技場は、約350億円をかけて5万人規模となるように座席を増築。その後、収益性の高い様々なスポーツなどのスタジアムとして活用する。競技場単体の建設費は、約600億円と現行案の約3分の1となり、運営費の削減も可能となる。増築費と合わせても約950億円で2100億円とされる現行案より1000億円以上もスリム化される。

 国立競技場は昨年12月から解体工事を行い、今月11日に地上の構造物などが完全に撤去された。現行案のままで建設するのか、今回提出された新計画案を採用するかは今夏をメドに最終計画案をまとめる見通しで10月からの着工を目指す。JSCは新国立競技場の現状について「建設計画を進めている段階。最終案を出すかどうかはまだ決まっていない」と説明した。

 


反ザハ案派にとってはこれは一発逆転のホームランともとれる内容で、反ザハ派とも言う人達の間では盛り上がってるのですが、細かなディテールが怪しいのです。今まで報知新聞しか報じられていないというのがまず怪しい点で、次に「競技場のイラスト、運営費の試算など具体的な内容」を出す「民間会社」というのは限られてくるはずですし、具体的なコンサルをするには相応のお金がかかってるはずです、一体このプランを誰が発注して、お金がどこから来てるのかが甚だ怪しいのです。

(追記)その後の報道で、仮設で8万人・常設は5万人、可動式屋根は五輪に設置など報知の報道と一致する報道が相次いでおり、2015/05/18時点では上記の報知新聞の案は事実であると判断いたしました。それを踏まえ下記をお読みください。

 

そもそも仮説といっても2週間だけ使えれば良いものじゃなく、ラグビーWCにも必要で8万人規模のスタジアムが必要で、一年程度存置して耐えうる強度が必要か、あるいはその都度ビディ足場の観客席を組む必要があるわけだし、JSCも妥協するにしても8万人スタジアムは妥協しないところだろうし、そもそもこの種の話を磯崎新が真っ先にキャッチしそうだし、いろいろ現実味が無いなと思っていたら、次の日にこのような続報が。

 

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 2020年東京五輪パラリンピックのメイン会場となる新国立競技場(8万人収容、東京都新宿区)で民間会社が文科省などに提出した建設費を抑制する新たな計画案に、五輪後に野球あるいはサッカーの専用スタジアムに改修する運営方法が盛り込まれていることが15日、分かった。政府関係者が明らかにした。計画案はすでに政府、文科省に提出され、検討が始まっている。現行案では、五輪後に野球を開催するプランはなく、新計画案が採用されれば、20年以降に新国立競技場プロ野球の開催も視野に入る。

 新計画案で示された運営方法によると、東京五輪後に新国立競技場の座席を大幅に削減し、5万人規模に改修する。その後、収益性の高いプロ野球、あるいはサッカーのいずれかの専用スタジアムとして使用する。

 五輪のメインスタジアムが特定のプロスポーツ専用スタジアムになった例では1996年のアトランタ五輪がある。大会後に大リーグ、アトランタ・ブレーブスの本拠地となり現在も使用されている。今回、提出された計画案もアトランタをモデルにしており、利用率を上げることで継続した黒字化を図り、建築費の回収も可能と試算している。政府関係者は「専用スタジアムとすることで、健全な収益構造を構築できる」と分析している。

 新国立競技場の建設・運営を行う日本スポーツ振興センター(JSC)が昨年8月にまとめた現行案では、五輪後もプロチームの本拠地とはしない方針で、サッカー日本代表戦やコンサートなどを行うとしている。一方で新計画案では、野球、サッカーの2大スポーツは年間を通じて定期的に試合が行われ、集客が見込めることから、関係者は「安定した賃料収入が確保できる」と話している。

 また、複数の政府関係者によると、現行案では年間約40億円の運営費などがネックとなり、長期間にわたり約20億円の赤字が継続する可能性があると試算。新計画案で集客力のあるプロ野球が開催されれば、収益の向上や建築費用の回収が早まることも期待できる。

 新計画案の建築方法は、8万人分の座席のうち5万5000人分を仮設席として設置。五輪終了後に3万人分を増築して5万人台としても合計で建築費は約950億円と試算、最大で2100億円とされる現行案より、1000億円以上の削減が可能となる。さらに今回、明らかになった五輪後の運営方法で一層の収益の改善が見込まれる。

  この記事を見て私はハッといたしました。ナショナルスタジアムとしては8万人というキャパシティは必要でも、プロスポーツの常打ち小屋として5万人というのは国民的人気チームのキャパシティとしては必要にして充分の規模です。Jリーグにおいて国立は中立地で聖地であるという建前上本拠地に置くクラブの存在を認めておりませんし、条件が良い場所に本拠地を移転すると言うことが(むしろメジャーリーグの方が活発に)行われている野球と違い、サッカーはホームタウンという意識が強い故に、既存の強豪クラブが地方を捨てるということはあり得えないでしょう。

 となると、有力視されるのは野球ですが、まず以前から巨人首脳陣は「天然芝の新スタジアム」が欲しいという趣旨のことを公言し、現状の東京ドームの4.6万人規模でもキャパシティが不足気味なのです。さらに株式会社東京ドームは読売グループではない上に2020年代には築30年を超え老朽化という問題が迫ってきます。

そこに国立競技場を採算と低コストを錦の御旗にした野球場にする話を出し、あわよくば株式会社読売巨人軍がスタジアムの指定管理者となれば、実質的に「自前の球場」が破格の値段で手に入ります。一連の報道はそのための観測記事なのではないでしょうか?

とは言っても、あの当たりは競技場の建て替えをきっかけに神宮球場秩父宮などの突き再開発が予定されていた地。仮に野球場となったら再開発計画も1からの見直しを迫られますが、どうも読売グループと森喜朗氏と確執のようなドロドロとした話が容易に想像できます。

工期が五輪に間に合わないという理由であればまだしも採算性や建設費という理由だけで見直すというのは、いかにもデフレスパイラル的な発想であり、文化立国を目指す我が国にはふさわしくないと思っております。低コストで好採算性を目指せというのであれば、ゼネコンに設計を任せれば良いだけの話で、アトリエ系建築家の存在意義を最初から否定するような物じゃないのでしょうか?

反ザハ派におかれましては「見直されるヤッター」じゃなく、文化国家としてふさわしい建設のあり方や利権でドロドロという自体が起こらないように注視してほしいものです。