高輪ゲートウェイ駅撤回を主張する能町みね子の駅名への定見の無さが酷い
コラムニストの能町みね子が高輪ゲートウェイ駅撤回を主張する署名がそれなりに好評なようだが、高輪ゲートウェイ駅はJR東日本が主催する再開発事業「グローバルゲートウェイ品川」予定地に位置しており、駅は港区港南*1で、高輪地区と芝浦地区の境界線。簡単に引き下がると思えないのであるが、それにしても駅名撤回を主張する能町みね子はその資格があるのかを問いたい。
放言のオンパレード
地名マニアという能町は東京メトロ系のサイトで「能町みね子の駅名ソムリエール」なる連載があった。
「地名や駅の名前にはその地域の歴史に合ったようなものを残してほしい。」
という趣旨の元で独断と偏見で「江戸後期から明治始めくらいに使われていた、地域を代表する特徴的な地名か、もしくは、坂や寺など、その土地のランドマークとなる名称を新たな駅名」に付けようという趣旨の連載なのであるが、地名に興味はあれど命名に至った由来には興味が無いようで、銀座線開業当時からある「上野広小路駅」を「下谷広小路」に改名しろなど、明治時代からの瑞祥地名である浦安駅を「昔からの漁師町なので、よし」と言ったり、*2その駅名になった経緯を無視した暴論がしばしば見られる。
一々突っ込むのも面倒くさいのであるがとりわけ酷いと思ったのはこの記述
青山一丁目〜表参道も、微妙だと思う。「青山でイベントがある」などと言ったとき、その会場は9割方、外苑前か表参道が最寄駅です。青山一丁目駅に用があることはそんなにない。にもかかわらず、「青山」という名前がつく駅は青山一丁目のみ。実際、私の知人で「青山でのイベント」に行く時に間違って青山一丁目で降りた人は何人かいる。これはゆゆしき問題ですよ!
古い地名を大事にしろと良い、一方で東京駅は「都内をうろつく地下鉄で『東京駅』があるのも変な話」という、旅客案内という駅名に重要なファクターを無視した理由*3で丸ノ内線東京駅は「丸ノ内で良い」とか言うくせに、青山一丁目駅は北青山駅・外苑前駅は旅客案内上の理由から青山駅・表参道駅は南青山駅に改名しろという。
それにしても、北青山・青山・南青山なんて、太郎次郎三郎みたいな投げやり名称は余りに酷い。原稿書いてるうちに最後まで書くのが面倒くさくなったのだろうか?
そもそも銀座線開業時は外苑前駅は青山四丁目駅、表参道は青山六丁目駅であり、百歩譲って青山に統一するなら開業時の駅名というならまだ解るが、そもそもこの人銀座線開業時の古地図読んでるのだろうか?
昭和初期の学園の名がダメで、1980年代に付けられた通りの名が良いとする矛盾
dogatch.jp
この連載と同じ趣旨の企画をテレビでもやっていたようなのだが、そこでは極めつけとも言うべきとびきり酷い改名案が出てきた。
「自由が丘」を探ってみると、丘でさえなく、湿地帯だったことが判明。さらに、当時は田舎すぎて、ランドマークになる坂や寺すら見つからないという。苦戦する能町に対し、ヒャダインが「逆に今に寄るとか」とアドバイス。現在、駅近くの通りが「マリクレール通り」と呼ばれていることが分かると、それをそのまま駅名にすればいいという3人の意見が一致。「自由が丘」は「マリクレール通り」として生まれ変わった。
マリクレールなる名称はマリ・クレールというフランスのファッション雑誌の日本語版が1982年に創刊されるにあたってできたタイアップ地名である。ランドマークになる坂や寺すら見つからないというが、駅設置当時の駅所在地が「荏原郡碑衾村大字衾」という地名なので改名するなら衾駅が妥当であろう。実際大井町線が出来たときの改名案がそうだったのだから。
それにしてもマリクレール通り駅である。
— d a i s u k e (@dai_suke_orz) May 14, 2017
駅名ソムリエールは江戸後期から明治初期あたりからの地域を代表する特徴的な地名を採用すると言う。それに昭和4年は若いのだろう。
マリクレール通りは元はとうきゅう通りをマリクレールというファッション誌の発売に合わせて昭和57年に改称したもの。
#久保みねヒャダ 、能町さんの「駅名ソムリエール」(駅名を勝手に修正企画)、前回の補足で自由が丘→衾沼(ふすまぬま・昔の駅のあたりの沼地の名)に。自由が丘の名を見るたびに脳内変換してしまいそうなインパクト。
— jiyujoho@裏紅白とか (@jiyujoho) June 3, 2017
さすがに、地元の方から批判するTweetもあり、翌週に「マリクレール通りから衾沼駅にします」という訂正放送があったようだが、丸ノ内線開業当時からすれば付けようが無い「蚕糸の森公園」駅なんて駅名をランドマークだからと採用しつつ、
自由が丘学園の創立は昭和初期で、駅名の歴史とほとんど変わらないので、さほどの由緒は…… RT @amimama08220501: 能町さん、自由が丘は流行りの「丘」ではありません。自由丘学園を発祥としている、由緒正しい駅名です!😰😰😰
— 寒い能町みね子 (@nmcmnc) May 14, 2017
自由が丘学園は「昭和初期の比較的新しいランドマークだから不採用」と自己矛盾を起こしてる。
燃えないところを選んで火を付ける
そもそも論として「旧来の地名に復古しろ」というなら東京や大阪を東の京とか、坂は土に返る(=死ぬ)と読めるから縁起が悪いとかしょーもない理由で改名された江戸や大坂に戻せと主張すべきだろう。
更に言えば、新幹線の駅なんて新●●なんて伝統もヘチマもない駅名の宝庫である。新函館北斗の北斗市なんて10年前に出てきた合併地名であり、北斗なんて名前自体、特急北斗か寝台特急北斗星くらいしか当地に縁が無い。強いて言えば北海道のどこでも付けられるような瑞祥地名である。
わざわざ田中角栄*4が出てきて、駅名は燕市、地名(=駅長室所在地)は三条市という形で落着した新潟県の燕三条駅をどう改名すれば良いのか能町にご意見を伺いたいものである。新幹線の駅に手を付けたら流石に炎上するというのはわかってるのか、「顔はやめな、ボディにしな」的な理屈が垣間見える。
今回の改名署名運動でも今まで散々放言を書き散らしたのに「(投票)上位3案のどれかがいいと私は思いますが、どれを選ぶべきかまでは明言しません。」と逃げる辺り能町の狡さが垣間見える。*5
インタビューやchenge.orgの趣旨説明でもあれこれ理論武装してるけど、要するに「山手線なんて目立つところにこんな駅名は気に入らない」以外の何物でも無い。コラムニストになれればこんな居酒屋談義でも金を稼げるなんて羨ましい限りである(僻み)